Apple Intelligenceから考える「どこに情報を置くか」の重要性

先日のApple Intelligenceの発表を見て気になったポイントと、考えたことを書いていきます。

特段私はAIの専門家ではないので、間違ったことを書いていたらごめんなさい。ご意見・ご指摘お待ちしております。

満を持した「Apple Intelligence」

MacBook Pro、iPad Pro、iPhone 15 Proに表示されている新しいApple Intelligenceの機能。
引用:Apple Newsroom

詳しい発表内容はApple公式リリースをご覧ください。

iPhone、iPad、MacにApple Intelligenceが登場

iPhone、iPad、MacにApple Intelligenceが登場

Appleは本日、iPhone、iPad、MacのためのパーソナルインテリジェンスシステムであるApple Intelligenceを発表しました。

一言でいうとApple製品の各種OSにAIが統合されるという内容です。

注目すべきは以下の4点です。(文章の校正・要約や画像生成は他のAIでもできるのであえて触れません)

  • プライバシー重視
  • iOS、iPadOS、MacOSに統合
  • アプリを横断するアクション
  • ChatGPT「も」使える

詳しく見ていきましょう。

ポイント①:プライバシー重視

自分のデータがAppleの外に出ることが無く、プライバシーが守られるというところがポイントです。

Apple Intelligenceは基本的にデバイス上の処理(ローカル)で動作します。Appleや外部のサーバーにデータが送られることはありません。

デバイス上で処理できないものは「Private Cloud Compute」と呼ばれるAppleのサーバーで処理が行われます。リクエストを処理するためだけに使われるので、データが保持されたり露呈されたりすることはありません。

第三者の専門家がプライバシーが保護されているかコードを検証できるようになっていることも特徴です。

常に第三者の目が入った状態でプライバシーが守られることになるため、Appleとしてもプライバシーには自信があるといえるでしょう。

ポイント②:iOS、iPadOS、MacOSに統合

現時点でPC、タブレット、スマートフォンのデバイス上で動くAIはApple Intelligenceだけだと思います。

つまり、どのデバイスを使っても同じ体験ができる、ということです。

例えばWindowsはChatGPTとの統合を進めている一方で、AndroidはGoogle Geminiを推進しています。これではデバイス間の連携は期待できません。

しかもOSに組み込まれているところがポイントです。

Appleは既にユニバーサルコントロールやユニバーサルクリップボード(注)などの機能によって、デバイスの垣根を超えた体験を提供しています。

Apple Intelligenceがすべてのデバイスに入ってくるということは、さらにデバイス間の連携が進むのではないかと期待が持てます。

ユニバーサルコントロール:MacからiPadを操作する機能
ユニバーサルクリップボード:iPhone、iPad、Macでクリップボードの中身が同期される機能

ポイント③:アプリを横断するアクション

Apple IntelligenceはOSに統合されていることから、純正・他社製関係なくAIがアプリを横断してアクションを実行することができます。

またデバイス上にある複数の情報をApple Intelligenceが把握していることも特徴です。

例えば、Siriに「ジェイミーがすすめてくれたポッドキャストを再生して」と言えば、メッセージとEメールのどちらに書かれていたかを思い出さなくても、Siriがそのエピソードを探して再生してくれます。(Appleより引用)

これがどれくらい実用性があるかは未知数ですが、本当にこの通りなら非常に便利ですよね。

「さっきメモアプリに書いたToDoをリマインダーに登録しておいて」とか、「昨日Macで編集したWordファイルをiPhoneに送って」みたいなことができたらすごく便利そうです。(デバイス間を超えたアクションは多分まだできない)

ポイント④:ChatGPT「も」使える

Apple IntelligenceではChatGPTも利用できます。Apple Intelligenceでは答えられない専門知識や文章生成をしたいときに呼び出すことができます。

ユーザーはChatGPTを使うかどうか選べるので、使いたくない人は無効にできます。

誤解されている方もいるかもしれませんが、Apple Intelligenceの中身がChatGPTということでは無いです。

また将来的には他のAIモデルを使うことも可能になります。

Apple Intelligenceは、あくまでOSレイヤーのAIであって、その枠を超えることは外部のAIモデルに任せる、というのは結構合理的にも思えます。

今までもSiriの検索エンジンがGoogle、Bing、DuckDuckGoなどから選べたように、AIもユーザーが好みに合わせて選んで使うのが普通になるのかもしれません。

「どこに自分の情報を置くか」の重要性

ここからが本題です。

私はWWDCを見て、AI時代は「どこに情報を置くか」が重要になると考えました。

そもそもスマホやPC、クラウドサービスなどにまたがる自分のデータを完璧に管理しきれている、という人はほとんどいないと思います。

だからこそ、今のうちに自分のデータを整理して、どこのプラットフォームに身を置くか、を考えていく必要があるのではないでしょうか。

考えるポイントは3つ。

  • プライバシーを「信用」できるか
  • ローカルに置くか、クラウドに置くか
  • アプリやデバイスの「壁」を超えられるか

この観点から結論を言うと、現時点ではAppleエコシステムが圧倒的に強力です。

順番に解説していきます。

プライバシーを「信用」できるかどうか

Apple IntelligenceのようなOSにAIが入ってくる時代になると、今まで以上に個人情報があらゆる場面で活用されるようになります。

AIがプライベートの隅々まで入ってくると、最初は不安に思う人も多いはず。

最近ではYouTubeの未公開動画がGoogle社員によって流出したというニュースもあり、どれだけプライバシーが守られていようと不安に思うのは当然です。

Google社員がYouTubeの管理者権限で未公開動画にアクセスして事前に情報を流出させていたと判明、任天堂や著名人が被害に

Google社員がYouTubeの管理者権限で未公開動画にアクセスして事前に情報を流出させていたと判明、任天堂や著名人が被害に

2024年5月30日にGoogleの内部文書が大量流出し、Googleはこの文書が本物であることを認めています。この内部文書にはGoogleの検索アルゴリズムについての記述のほかに、6年間にわたるプライバシーとセキュリティに関するインシデントのレポートが含まれており、Googleの従業員がYouTubeの管理者権限を使って公開されていない情報を悪用したり外部に持ち出したりしていたことが明らかになりました。

そうなってくると、プライバシーが守られていることは前提として、どれほどデバイスをつくっている企業が信用できるか、が重要になってくるのではないでしょうか。

どれだけAppleを信用するか、というところはユーザーに委ねられますが、個人的にはここまでプライバシー保護に力を入れているならば他の企業よりも信頼できると考えています。

ローカルに置くか、クラウドに置くか

現状の生成AIは、ChatGPTを使いたいときはOpenAIのサーバーに、Geminiを使いたい場合はGoogleのサーバーにアクセスする必要がありました。

あたりまえですがGeminiで入力したデータはChatGPTで読み込むことはできません。

GeminiはGoogleサービス全体に入り込んでいるため、Googleのエコシステムの中で使う分には非常に便利です。しかし他のAIモデルやサービスを使いたくなったときに困ることがあるかもしれません。

そのためクラウドに頼りすぎるのも一考の余地があります。

理想としてはすべてのデータを自分でローカル管理できればいいですが、クラウドの圧倒的な利便性には劣ります。

そこでOSにAIが搭載されるようになれば、ローカルの不便さが大きく改善する可能性が高いと思うんです。

今までクラウドを通さないと使えなかった文書校正や画像生成もローカルアプリで使えるようになったら結構便利ではないでしょうか。

維持コストの面でもローカル管理が無難です。クラウドサービスにいつまでもお金を払い続けるのはもうこりごりです。(もちろんApple Intelligenceも今後有料化する可能性が無いとは言えません)

アプリやデバイスの「壁」を超えられるか

Apple Intelligenceはアプリを超えたアクションを実行できるとポイント③で紹介しました。

ChatGPTでも、API連携によってさまざまな活用が広がっています。(ChatGPT内で他サービスと連携したアプリが作れるGPTsなど)

このようにアプリやサービスの壁を超えた利用は今後重要になってくると思います。

ChatGPTやGeminiなどはクラウド中心のサービスなので、パーソナルな情報にアクセスしにくいという問題がありました。

ちなみにGeminiはGoogle Pixelのデバイス上で動作するモデルもあります。

ローカルで動いているものの、Appleのようなパーソナルデータの活用というところではまだ弱く、今のところクラウド上のGoogleサービスで利用することが前提になっているようにも見えます(おそらくAppleに対抗する準備はしていると思いますが)。

Appleはオンデバイス中心で、Googleはクラウド中心。

だから両者のAIは思想的に異なるものといえるでしょう。

そのためGeminiはAppleと直接競合するものではなく、あくまでApple Intelligenceから呼び出せるAIモデルの一つに過ぎない(将来的に)、ということです。

話を戻すと、基本的にクラウドのAIサービスはOSを問わずに使えるので、あたりまえですがAppleデバイスの上でも使えますよね。

Appleデバイスを使っていれば、AIの恩恵を隅々まで受けられる可能性が高い、と言い換えることもできると思います。

またAppleはMac、iPad、iPhoneなどのデバイス間の連携にも力を入れています。

将来的にはApple Intelligenceがデバイスの壁を超えたアクションをできるようになることも考えられるので、そうなるとますます強力になると思います。

これが現時点でAppleエコシステムが圧倒的に強い理由です。

まとめ:AI時代のデバイスの選び方

今後のデバイス選びにはローカルでAIが動くか、またAI処理のスペックが重要視されるようになるでしょう。

いくらAIの性能が高くても、自分の持っているデータを安心して最大限活用できるかどうかが重要です。

「どこに自分の情報を置くか」を判断する3つのポイントをおさらいします。

  • プライバシーを「信用」できるか
  • ローカルに置くか、クラウドに置くか
  • アプリやデバイスの「壁」を超えられるか

本当にAppleは今回プラットフォーマーの強さを十分すぎるほどに発揮したと思います。

ここまでApple Intelligenceが強いと他社のデバイスに乗り換えにくくなるのでは、とも思いましたが、ぶっちゃけAIは付加価値の一つなので、そこまで何か変わるわけではないと考えています。(むしろアプリ課金やiCloudの方が制約になりそう)

こんなに書いてなんですが、私自身はiPad miniしかApple製品を使っていないので、Apple Intelligenceの恩恵は全く受けられません。

日本語対応は来年以降なので、少しずつAppleエコシステムに移行していきたいです。

それまでにGoogleやMicrosoftなども対抗して、AIがもっと盛り上がることに期待です。

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